記事公開日
電源システムとは?工場現場の停電リスクを最小化する方法

電源システムとは、企業の安定稼働を支えるインフラの一つであり、特に製造業や工場現場においては、その重要性が年々、高まっています。
近年、自然災害や老朽化設備による突発的な停電が各地で発生し、生産ラインの停止や設備トラブルに直結するリスクが顕在化しています。
国内の工場では、停電時のリスクを最小限に抑えるために、事業継続計画(BCP)対策の一環として、無停電電源装置(UPS)を含む電源システムの導入が加速しています。
こうした背景の中で、どのような仕組みで工場を守り、どのように選定・運用していくべきかが、多くの設備担当者の関心事となっています。
この記事では、「電源システムとは何か?」という基本から、工場現場における停電リスクへの具体的な対応策まで、わかりやすく解説いたします。
電源システムとは?
電源システムとは、機器や設備に安定的かつ安全に電力を供給するためのシステム全体を指します。
一般的には、商用電源からの供給だけでなく、非常時や瞬時の電圧変動に対応する補助電源、制御装置、電力分配機構などを含みます。
特に工場などの生産現場においては、生産ラインを止めないための「停電対策」としての役割が重視されます。
電源トラブルは一瞬の電圧低下や電源断でも深刻な影響を及ぼす可能性があり、生産停止、品質不良、設備の故障など、企業の信頼や収益に直結します。
そのため、電源システムは工場のBCP(事業継続計画)の中でも中核的なインフラの一つとして位置付けられています。
電源システムの種類
電源システムには複数の方式があり、それぞれ異なる特性と用途に応じた選定が求められます。
工場の設備環境や必要な安定性、予算に応じて最適な方式を選ぶことが、停電リスクの最小化に直結します。
以下に代表的な3方式について解説します。
常時商用方式
常時商用方式は、平常時には商用電源を直接使用し、停電などの異常発生時にバッテリーへ切り替わる仕組みです。
切り替え時には数ミリ秒の瞬断が発生しますが、小規模な機器やPCなど一部の設備では問題にならないケースもあります。
構造がシンプルなため、導入コストやメンテナンス負荷が比較的低く、予算に制限のある現場に適しています。
常時インバータ方式
常時インバータ方式は、商用電源を一度バッテリーに充電し、その電力をインバータで変換して常時供給する方式です。
この方式では商用電源の影響を受けずに常に安定した電力が供給されるため、停電時も瞬断なく稼働が継続できます。
精密機器や生産ラインなど、瞬断すら許されない工場設備に最適ですが、設備コストと電力変換効率の点で慎重な導入判断が求められます。
ラインインタラクティブ方式
ラインインタラクティブ方式は、通常は商用電源をそのまま利用しつつ、電圧の変動や瞬間的な低下に対しては自動的に補正を行う仕組みを備えています。
停電時には内蔵バッテリーから電力を供給しますが、切替時間は非常に短く、短時間の停電であれば業務への影響を最小限に抑えることが可能です。
コストと安定性のバランスに優れており、中小規模の工場や一般的な設備保護には最も採用されやすい方式です。
工場における電源システムの必要性
なぜ停電リスクに備えるべきなのか
工場の生産現場では、設備や機器が24時間体制で稼働しているケースも多く、突発的な電源トラブルは重大な損害をもたらします。
特に自然災害の頻発や老朽化した電力インフラの影響により、想定外の停電が増加傾向にあります。
たとえ一瞬の停電でも、生産ラインが停止し、製造途中の製品に不良が発生する、設備が故障する、といったリスクが伴います。
また、電源の不安定化は制御システムやITインフラにも影響し、トレーサビリティや在庫管理などにも支障をきたす可能性があります。
特に中小規模の工場では、BCP(事業継続計画)を未整備のまま稼働している事業所も少なくありませんが、緊急時の備えがなければ、復旧までに長時間を要し、顧客からの信用失墜や売上損失にもつながります。
工場で発生しやすい電源トラブルの例
工場現場で頻発する電源トラブルには、以下のような事例が報告されています。
- 瞬間的な電圧低下(瞬低)…大型機器の起動や雷などにより電圧が一時的に低下し、PLCや制御盤がリセットされる。
- 瞬断…短時間の電力断により、生産ラインが自動停止。復旧にはオペレーターの再設定や点検が必要。
- 長時間停電…台風や地震などの自然災害後、復旧まで数時間~数日を要するケースがある。
- 周波数の変動…安定した周波数が供給されないことで、モーター類に負荷がかかり異常停止や焼損が発生。
こうしたリスクを想定し、安定した電源供給を可能にする電源システムの導入が強く求められています。
特に、無停電電源装置(UPS)などは、停電発生時にも機器の継続稼働や安全停止処理を可能にし、被害を最小限に抑える有効な対策です。
電源システム導入時のポイントと注意点
システム選定時の重要ポイント
電源システムを導入する際には、工場の規模や設備構成、使用電力、稼働形態に応じた仕様選定が極めて重要です。
適切な選定がされていないと、導入後に容量不足や過剰投資となる恐れがあります。
以下の観点をもとに、慎重な判断が求められます。
- 必要な出力容量の算出…保護対象機器の消費電力と想定される停電時間を基に、バッテリー容量を決定します。
- 設置環境の確認…粉塵、湿気、振動、温度などの環境条件が厳しい現場では、耐環境性に優れたモデルの選定が必要です。
- 対応方式の選定…常時商用方式か、常時インバータ方式か、ラインインタラクティブ方式かを、保護の必要性やコストに応じて選びます。
- 拡張性の確認…将来の設備増設に対応できるよう、増設可能な構成かどうかも重要です。
導入前には、専門業者とともに現地調査を行い、仕様書や構成図をもとに最適なプランを設計することが推奨されます。
導入後の運用・保守で意識すべきこと
電源システムは導入して終わりではなく、継続的な運用管理と定期的なメンテナンスが求められます。
特に、バッテリーを内蔵する無停電電源装置(UPS)では、以下の点に注意が必要です。
- 定期点検と動作確認…UPSが正常に作動するか、定期的な放電試験や自己診断機能のチェックが不可欠です。
- バッテリーの交換時期の管理…鉛蓄電池タイプであれば3?5年、リチウムイオンタイプでも6~8年を目安に交換を計画します。
- ログ管理と障害履歴の把握…異常発生時の原因究明や再発防止策の立案に役立ちます。
- ファームウェア更新と製品寿命の管理…ソフトウェアアップデートや製品の経年劣化による交換時期の見極めも重要です。
また、トラブル時の対応マニュアルやBCP(事業継続計画)との整合性を取っておくことも、設備担当者の備えとして欠かせません。
まとめ
工場の安定稼働を支える上で、電源システムは今や欠かせない存在となっています。
特に自然災害の頻発や電力インフラの老朽化により、突発的な停電は企業にとって大きな経営リスクとなりつつあります。
こうした背景の中、無停電電源装置(UPS)を始めとする電源システムの導入は、停電リスクを最小限に抑える有効な手段です。
本記事では、「電源システムとは何か?」という基本から、工場における必要性、方式の違い、導入のポイントまでをご紹介してきました。
適切な選定と運用によって、設備の保護だけでなく、製品品質や生産効率の維持にもつながります。
これから電源対策を検討される設備担当者の皆さまには、ぜひ早期の導入をおすすめします。
まずは現場のリスクを洗い出し、信頼できるパートナーとともに、自社に最適なシステム構築を目指してみてはいかがでしょうか。